棒がいっぽんあったとさ

何かの弾みで「棒がいっぽんあったとさ〜♪」と口ずさんだら、8歳児が何それ?と言った。

そうか知らないのかと思い、これは絵描き歌だと教え、ついでにわたしが歌うとおりに描いてみてもらった。

 

「え、葉っぱ?じゃない?

   カエル、じゃない?アヒル??

   6月6日って天気予報???」となって何がなんだか分からなくなってた。

f:id:sayakaloe:20190205172553j:image文字通りに受け止めすぎの例

歌いながら正解を描いてやった。

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この時、わざと最後を「あーっという間に フフフンフンフフフン♪」と歌い、「これ何だと思う?」と質問してみた。

 

じっと絵を見る8歳児。

「アヒル……?じゃないよね」

「正解は『かわいいコックさん』でしたー」

「はああああ???」

……いや、わたしも描いててこれをかわいいとは思ってないし、そもそもこいつのアイデンティティである「コックさん」の要素って「あっという間に」とさささっと描く帽子だけなんだよなと絵を見て思った。

 

そもそもこの絵描き歌って誰が作ったんだろうね?とオッケーグーグルしたところ、作詞作曲者は不詳、1964〜1965年にNHK『うたのえほん』で紹介されて広まったそうだ。

かわいいコックさん - Wikipedia

ふーん、と言うしかない。

わたしはこれを当たり前のように「かわいいコックさん」だと思って生きてきたけど、実はそうでもないよなと改めて発見したのであった。

この絵描き歌を知らなさそうな子供や外国人と接する機会のある方は、ぜひ歌って反応を見てみてほしい。

 

 

これだけで終わるとあんまりなのでおまけ。

「棒がいっぽん」といえば、わたしの大好きな高野文子のマンガがある。

棒がいっぽん (Mag comics)

棒がいっぽん (Mag comics)

 

短編集なのだけど「棒がいっぽん」という作品はなく、「奥村さんのお茄子」という作品のいわばテーマソング的な感じで絵描き歌が使われている。

シンプルな絵でとんでもなく複雑な話を展開しており、いくらでも読み解きようがあるので「奥村さんのお茄子 解釈」と検索すればインターネットの海で小一時間潰せる代物だ。

 

物語は問いで始まる。

「一九六八年六月六日木曜日 お昼何めしあがりました?」

 

ここで問われているのは25年前の、何でもない日のこと。

問いかけてきた人物が主人公に言うには、どうやら主人公は食堂で茄子の漬物を食べていたようで、その周りにはたくさんの人がいて、ラブレターを出したり体育の授業を見学したりして、それぞれが何か思いながらなんでもない日常を送っていたそうだ。

 

くらくらするようなたくさんの情報量をもつ、何気ない一瞬。

人生ぜんぶが、その一瞬につながっていて、たくさんの一瞬をつなぎ合わせてできている。

つまりはそういう話なんだとわたしは思う。

 

かわいくないコックさんを描いて見せ子供に何それと言われたことなんて、25年後には忘れているだろう。それでもその時間はつながっているんだよなあと思った。