ゲロとリスクヘッジ

乗り物酔いをしやすい女が、乗り物酔いをしやすい男と結婚したらどうなるか。

答えは、「乗り物酔いをしやすい子供が産まれる」だった。

 

子供ふたりとも乗り物酔いしやすく、時にタクシー乗車5分後に、時に曲がりくねる箱根の山道で、時に上から吊るすタイプのオシャレな椅子で、わたしは子供のゲロを浴びてきた。

咄嗟の判断で自分のトートバッグを全開にして全てを受け入れ、バスを一切汚さずに降りたこともある。

 

最近は子供も大きくなって酔い止め薬が使えるようになった。薬を飲むタイミングや体調などによっては、飲んでも酔ってしまうこともあるけど、とにかく先手を取って飲ませることで、だいぶ乗り物酔いを回避できるようになってきた。

 

さて、8歳児の通う習い事では、夏休みに新幹線とバスで行く合宿がある。

初めて参加資格を得た昨年は「乗り物酔いをしたくない」という理由で参加しなかったのだけど、今年は「みんなと合宿したい」という気持ちが勝って参加することになった。人生初めての親元を離れての泊まりである。

酔い止め薬を飲むタイミングを教え、エチケット袋を持たせ、「吐いてもいいよ、楽しんでおいで!」と不安を和らげて送り出した。

 

結果どうだったかというと、吐いた。

最終日、昼食を食べてすぐにバスに乗ったので薬が間に合わず気分が悪くなってしまったようだ。

エチケット袋は途中で処理し、汚れた服は駅で着替え、すすいでビニール袋に入れて持ち帰ってきた。

先生の手を借りず、自分で対応してきた。

吐かないようにいくらリスクヘッジしてやっても、吐くときは吐く。でも、うちの子はもう、自分のゲロは自分で処理できる。吐いてしまうつらさを知っているから、吐いてしまった他の子にもやさしくできるようになってくれるといいなあと思う。

 

「失敗しないようにするのも大事だが、失敗をリカバリーできるようにするのはもっと大事」と、子育てする上で意識してきたつもりだったけど、今更ながらこういうことだったんだなあと実感したのであった。概念が具体に落ちた。